せんぱぁい


大学に入学した頃から、
同級生でも年の差にばらつきがあるため、
高校までのように「先輩」「後輩」の差が
非常にあいまいになっていくのを感じたのですが
そのせいか、研究室にいて「先輩」と呼ばれることに
どこか違和感を感じるときがあります。


ほとんどの人がそのへんのニュアンスを
それとなく感じ取っているせいか、
基本的には「さん」付けで落ち着いているのですが、
学部生の一部に時折「〜先輩」と呼ばれたりするので
一瞬誰のことかと戸惑うくらいです。


もっとも、別に間違ったことをしているわけではないので
特に言及しないのですが、
そういう人がそのあたりを律儀にしている理由は
いったいどのようなものなのか、少し気になっていました。


単純に考えれば、
「その人の育ってきた環境」によるもの、ということになるでしょう。
親のしつけや、高校までの慣例など、
思いつくことはいくらでもあります。


しかし、そういったことをかたくなに守れる人間ならなおさら、
単純に学年の差で相手との上下関係を考えるのではなく、
あくまで相手を1個人として尊重することを大学の慣例として、
感じ取れるのではないかと思うのです。


どうしてもそのあたりのつじつまが合っていないように思えて
しかたなかったのですが、
つい先日、私とは真逆の人間に出会って
そのへんの理由が何となく判った気がしました。


どのへんが「真逆の人間」なのかといえば、
「学年の差が絶対的な上下関係だと思い込んでいる」点です。
たまたま私は臨時で大学のオープンキャンパス
手伝うことになったのですが
そのとき同じブースになった学部生の一人に、
どうやら下級生と認識されたらしく、
言葉の端々で若輩者扱いするフシがありました。


最初のうち、私はそれに気づかなかったため、
普段どおりに振舞っていたのですが、
それがどうも癪に障ったようで、
徐々に言い回しがきつめになっていったので、
ようやく気づきました。


「あ、この人は要するに
上下関係に気を使わないように見える私がうっとおしいわけか」


そもそもの誤解は私を学部生だと思っていることで、
確かに大多数が学部生だったことを考えるとやむをえないのですが、
もしもむこうがそれに気づいていたら、
逆にむこうは腰を低くしたことでしょう。


今回の場合、あくまで同じブースで仕事をするものとして
周りと接していたから分かりにくかった部分はあるでしょうが、
まず優先すべきはオープンキャンパスの訪問客と主催側の上下関係であり、
受け入れる側のスタッフでまったく同じ仕事を任されている立場同士で、
どちらが立場的に上なのかどうかを考えるのはナンセンスだと思います。


しかし世の中にはいろんな人間がいるわけで、
そういった場所だからこそ、
自身のアイデンティティーをかけてそこを明確にしたいという人間が
存在してもおかしくありません。
私はたまたまそういう人と当たってしまったのです。


まわりが基本的に「〜さん」付けで呼んでいても
「先輩」を使うという前述の学部生は
おそらく私と同じようなケースに
何度かあってきたのだと思います。
そしてその結果、用心にこしたことはないということで
「先輩」「後輩」と言うことで立場を明確にしたのでしょう。


私が大学に入学してから感じた、
「先輩」「後輩」の差のあいまいさは
単純に年の差にばらつきだけが理由ではありません。
上下関係というのは、仕事や研究などで自然にはっきりすると分かったからです。
年の差があろうが無かろうが、
デキル奴は上に立つし、先をいくのです。
わざわざ主張するようなことではないと思います。


それだけに、上下関係を推し量る基準が
学年や年齢しか思いつかないというのは
ある意味幼稚な話だと思うのですが、
いかんせん高校までに染み付いた固定観念というものは
そう容易に捨てきれるものではありません。


どんなときでも相手をできるだけ多面的に
見られるように心がけたいものです。